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白紙と初

第90号

(平成26年06月)

天道館道場長 清水 健太

紙にする」というフレーズをよく耳にします。

初心を忘れてはならない自分自身を律するための言葉です。しかし、ただ一生懸命汗を流して、まるで肉体の労働のような機械的な稽古法が白紙だと勘違いしていないでしょうか。たしかに余計なことを考えず、無心で稽古に向き合っているように見えるかもしれませんが。。。

一人の新入門者が本当に熱心に毎日稽古を続けて3か月が経ったとします。同様に有段者が3か月熱心に稽古をします。成長の伸び率は、おそらく新入門者の方が大きいでしょう。なぜなら、初めて合気道を習い始めた人には覚えることが沢山あります。技の動きを覚え、いろいろな人と道場で出会い新しい仲間が出来ます。同じ3か月でも新入門時の方が有意義なものに感じます。

初心者の心の新鮮さ。早く技を覚えたい!合気道を自分のものにしたし、!指導者・先輩 たちの動き一挙手一投足をよく見ます。新しいものを吸収したい気持ちが、生きた新鮮な気持ちを育み成長に繋がります。

5年後、10年後同じ気持ちを私たちは持ち続けているでしょうか。合気道を何年続けても、満足感・充実感を初心者のころと同じように得るための重要な要素こそが“白紙”であると思います。がむしゃらな稽古が100% 悪いとは思いませんが、20年後・30年後も同じ稽古法は間違いなく出来ません。いつどこに自分を成長させるヒントが転がっているかわかりません。そのヒントを拾うのは初心者の気持ちです。仮に『私はこの技を知っている!』という感覚が固定観念だとしたら、それを持っている時点で変化を起こすことは大 変難しいものになってしまいます。

初心者の目、初心者の心でいることが『白紙』。難しいことですが、常に自分から発見する楽しみを持って稽古に臨みたいと思います。

最後に、5月8日~13日の期間、毎年恒例のロシア・ウラジオストック指導に赴いて参りました。2002年に初めて渡露した際には、小さくない不安を持ちつつ管長に同行したことを覚えています。それが12年の後、毎年のように大勢の門弟が稽古のためにロシアから来日し、年に2度ほどウラジオストックでセミナーを開催するようになりました。様々なことがありましたが、新しい発見の連続でしたね。

純粋な心でい続けることは稽古においての白紙と同様であり、人間関係も全く同じであると感じさせられました。もっとも大切なのは国家間では無く、人間一人一人の信頼関係です。