孫弟子
第56号
(平成15年12月)
天道館管長 清水健二
1978年にドイツ指導へ行き始めてから今年で25年になる。今春にはベルリンで天道流合気道25周年の記念式典が盛大に催された。現在、ドイツに限らず近隣諸国はもちろんのこと、アメリカ、メキシコ、旧ユーゴスラビア、セルビア・モンテネグロ等ヘと天道流が広がっている。努めて普及させたというより、根が張り芽が出て幹が育ち、そしてようやく機が熟したという自然な流れである。
当時若かった弟子たちも年輪を重ね、その弟子たちの弟子つまり私の孫弟子に当たる若者が育ってきている。個人主義の国であっても多くの門弟たちが天道流の取り持つ縁で一つにまとまっている。大変喜ばしいことである。私はヨーロッパ指導においても自分の信念である武士道精神を貫くことができたのは、理解しようとする姿勢をいつも崩さない彼らに負うところが大きい、感謝しなければならないことである。
こんな想いをさせてくれたきっかけは、最近ドイツからの係弟子が相次いで来館し、みっちりと稽古をしてるからだ。その中でも思い出深いエピソードを持っている者がいる。ドイツに行きはじめて間もない頃、デッケンドルフ(ドイツ・東バイエルンのチェコとオーストリアとの国境に近い町) の道場で少年部の子供たち10数名が文部省唱歌「さくらさくら」を道着姿で合唱し、私を歓迎してくれたことがあった。そのメンバーだった一人が来日し、稽古に汗を流している。当時6歳だった彼も今や28歳のナイスガイとなり、身長はl90センチ近くある。
彼に限らず孫弟子たちの立ち居振る舞いにとても好感が持てる。自分は謙虚に相手を敬い、気配りやマナーがしっかりしている。手前みそだが、合気道を通じて古き日本の良さを学んでいるようだ。師から弟子へ、そしてまたその弟子へ・・・と脈々と受け継がれていくことを願ってやまない。